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研究

効果的にT-spinを行えるテトリスエージェントの検討

2025年11月14日~16日に開催された「第30回ゲームプログラミングワークショップ (GPW-25)」において、修士1年の植村侑生が、「効果的にT-spinを行えるテトリスエージェントの検討」の研究発表を行いました。

  • 植村侑生, 横山 大作, 効果的にT-spinを行えるテトリスエージェントの検討, 第30回ゲームプログラミングワークショップ(GPW-25), pp. 46-53, 情報処理学会, 2025.11.7. (PDF)

研究背景・目的

近年eスポーツとしても注目される『テトリス』において、「T-spin」は勝敗を分ける必須テクニックとして知られています。しかし、T-spinを行うためには意図的に屋根を作る必要があり、従来のエージェントが採用していた「穴や凹凸をペナルティ(悪手)とみなす評価関数」ではT-spinの構築が困難でした 。

そこで本研究では、T-spinに必要な地形を積極的に評価し、上級者プレイヤのように効率的にT-spinを行えるエージェントの構築を目指しました。


提案手法

本研究では、盤面の状態を評価する評価関数に対し、エージェントをT-spinの構築へと誘導するための新しい特徴量を導入しました。具体的には以下の特徴量を導入しました。

  • パターンマッチング: あと1手でT-spinを行える盤面状態に加え、その直前に頻出する地形パターンを検出し報酬を与えることで、段階的にT-spinの構築へ誘導します 。
  • 井戸の位置: T-spinを作りやすい位置(端から3-4列目)に最も低い列(井戸)を作るよう誘導します。

これらを用いた評価関数に加え、探索手法として以下の2種を採用し、性能について比較検討を行いました。

  • ビームサーチ: 非常に高速である一方、早い段階で評価が下がる手筋などでは局所最適解に陥る場合がある
  • モンテカルロ木探索(MCTS): 大局的な探索を行える一方、多くの計算リソースが要求される

実験

構築したエージェント(ビームサーチプレイヤ・MCTSプレイヤ)と人間プレイヤ(上級者・中級者)のプレイデータを比較しました。 その結果、ビームサーチプレイヤは上級者プレイヤと比較しても「平均攻撃量」で大きく上回り、特に「T-spin効率(設置したTミノがT-spinに使われた割合)」においては、上級者プレイヤに対して約2倍の数値を記録しました。

一方MCTSプレイヤについては、平均攻撃量が上級者プレイヤと中級者プレイヤの中間程度、T-spin効率においては上級者プレイヤと同程度の性能が確認されました。

また、Ablation testを通して各特徴量の評価を行ったところ、特にT-spin Doubleの構築に関するパターンが大きく性能向上に貢献していたことが判明しました。


まとめ

本研究では、T-spin特有の地形パターンを評価関数に組み込むことで、人間の上級者プレイヤを超える高い効率でT-spinを行えるエージェントを構築しました。 今後は、エージェントが見つけた最適な手を人間に提示することで、プレイヤのスキル向上を支援する学習ツールへの応用を目指しています 。

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