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正体隠匿型ゲーム「ShadowRaiders」を用いた陣営推定効果の検証

2024年9月6日に開催された「第53回ゲーム情報学研究発表会」において、修士2年の木島花蓮が、「正体隠匿型ゲーム「ShadowRaiders」を用いた陣営推定効果の検証」の研究発表を行いました。

  • 木島 花蓮, 横山 大作, 正体隠匿型ゲーム「ShadowRaiders」を用いた陣営推定効果の検証, 第53回ゲーム情報学研究会, 2024.9.6, (PDF)

研究背景・目的

近年、正体隠匿型ゲームと呼ばれる、隠された役職や陣営があり、それを推定しながら進めていくゲームの研究に関する需要が高まっています。中でも、陣営の推定手法の研究として、「人狼」と呼ばれるゲームでの研究が多く進められてきています。しかし、「人狼」ゲームは推定精度が勝率に与える影響が少なく、推定精度の評価がしにくいという点や、発言情報を使用することから、推定以外に複雑な要素を必要とし、また、リアルなデータを作成することが難しいといった点において、陣営推定手法の研究が難しい環境にあると考えました。

そこで私は、「ShadowRaiders」というゲームを陣営推定手法の研究に用いることができないかと考えました。「ShadowRaiders」は正体隠匿型ゲームの一つであり、推定結果から話し合い等を通さず直接攻撃を行うことのできるゲームであることから、勝敗に直結しやすいと考えられ、推定手法の有効性を評価しやすいと考えられます。また、発言情報に依存せずにプレイヤの行動や選択を基に陣営を推定することができ、ルールが明確なゲームです。

本研究では、このゲームのルールを一部改変してランダム性を減少させ、より評価しやすい環境を構築するとともに、推定情報をもとにルールベースで行動の決定を行うヒューリスティックプレイヤの実装を行います。この改変ルールとヒューリスティックプレイヤの性能の評価を行うとともに、この改変ルールを用いて、役職や陣営の推定精度が勝率に与える影響の検証を行います。

提案手法

「ShadowRaiders」のルールを改変し、攻撃のダメージを1固定にするなど、ゲームのランダム性を下げることで、推定手法の影響をより正確に測定できる環境を作成しました。さらに、推定情報を基に行動を決定するヒューリスティックプレイヤを実装しました。このプレイヤは、陣営推定に基づいて攻撃や回復などの行動を選択し、その効果をゲームの進行に反映します。

実験

作成した環境の評価として、まずは推定精度の勝率への影響を確認しました。推定できている人数が0人から4人の各パターンで1万回ずつ試行した結果、推定精度が0%から100%まで変化すると、勝率に約25%の差が生じることが確認されました。また、50%を超えると差が小さくなっており、これは推定できているプレイヤの陣営によっては推定できていないプレイヤの陣営が絞られているためではないかと考えました。

               推定精度と勝率の関係

そこで、2人推定が確定している場合のそのプレイヤの陣営による勝率の違いを検証します。こちらも同様に、各パターンでのプレイを1万回行うことで確かました。

               推定陣営と勝率の関係

結果として、推定ができているプレイヤの陣営によって勝率に差があることが確認できました。特に敵1人と市民1人のみが推定できているときの勝率が低いのは、推定できていないプレイヤの陣営が敵と味方であり、攻撃を味方にしてしまう可能性があるためだと考えられます。他も、各陣営ごとの勝率の差には説明可能な理由があり、このゲームは役職推定の精度をそのまま勝率に反映する素直な特性を持っていると考えられます。

まとめ

「ShadowRaiders」を対象とした陣営推定の研究において、評価しやすい環境の構築とヒューリスティックプレイヤの実装を行い、その有用性の検証を行いました。

本ルールを用いることでランダム性を下げたプレイが可能となり、推定精度が高まるにつれて勝率も上昇したことから、推定手法の評価を行いやすくすることが確認できました。