2025年8月に開催された「エンタテインメントコンピューティングシンポジウム (EC2025)」において、修士2年の江馬龍之介が、「色相・トーンの二段階配色推薦によるイラスト制作支援ツールの検証」の研究発表を行いました。本発表は、一般セッション優秀賞を受賞しました。(デモ: https://color-recommend.netlify.app/)
- 江馬 龍之介, 横山 大作, 色相・トーンの二段階配色推薦によるイラスト制作支援ツールの検証, エンタテインメントコンピューティングシンポジウム (EC2025), pp.73-80, 2025.8, (PDF)
研究背景
イラスト制作で「色をどう選ぶか」は作品の印象を大きく左右する重要なポイントです。 しかし、特に初心者は「赤で髪を塗ったけど、背景は何色が合うのだろう?」 「どのトーンの色がいいのだろう?」と迷うことが多くあります。 既存のツールのカラーパレットは候補が多すぎたり、制作途中で次に塗る色を提案してくれる仕組みは十分に整っていませんでした。
研究内容
本研究では、色選びをわかりやすくするために 二段階で色を提案する新しい仕組みを開発しました。

- 色相推薦(色の方向を決める): すでに塗った色をもとに、相性の良い色の方向(例:反対の色、似た色など)をいくつか提案します。
- トーン推薦(明るさや鮮やかさを調整する): 選ばれた色をもとに、「暗い色」「鮮やかな色」など複数のバリエーションを提示します。

この二段階方式にすることで、 一度に膨大な候補を見せられる従来の方法に比べて、 利用者は迷わず段階的に色を選んでいくことができます。
利用イメージ
たとえばキャラクターの髪を赤で塗ったとします。 次に相性の良い候補として「オレンジ色」「ピンク色」「水色」など配色として提案され、 さらにその中から「明るめの赤色」「暗めの水色」などを選べます。 これにより、初心者でも配色技法に基づく色を選ぶことができます。(デモサイト: https://color-recommend.netlify.app/)
実験と結果
この仕組みを検証するために、 20名のイラストレーターが描いたおよそ6,500枚の作品を分析しました。 「次に塗られていた色」をどのくらい再現できるかを調べたところ、 次のような結果が得られました。

- 色相推薦(図中青色): 実際に使われていた色相の約9割をカバー
- トーン推薦(図中橙色): 実際に使われていたトーンの約7割をカバー
つまり、この方法を使うと「本来そのイラストで選ばれていた色」を高い確率で導き出せることがわかりました。 従来の一括表示型パレットに比べて、候補数を抑えつつ的確な提案ができる可能性が示唆されました。
発表の様子

































